犬のせいじゃないけど

 アメリカの保護犬事情。

基本No Kill Shelterと謳っているのが保護団体。つまりどの犬も殺処分しないために保護団体が存在するはず。

ですが、実情はNo Killといっても、100%のワンちゃんが全てアダプトされて無事に里親が見つかるわけではありません。

これは、少しでも保護活動に関わっている人間としては時々どうしようもない感情に押しつぶされそうになります。今日はそんな日。

私が今関わっている保護団体もNo Killのひとつ。ただし、これはWebsiteでも公にしていますが、どうしても凶暴性のある場合は、やむを得ず安楽死をさせます。昨日、保護団体所属のまた一匹、安楽死になってしまいました。すごく見かけはかわいいパグです。

凶暴性、つまり噛み犬は殺処分がやむを得ないと判断されてしまう。今の団体は、これを公にしています。おそらくアメリカの団体の中には公にしないでその判断をするところもあると思いますので、団体を批判することは私にはできません。

だったら保護団体はトレーニングしていないのかと思われるかもしれませんが、どの保護団体も精一杯。どんどん新しいワンちゃんがやってきて、次々に回していかないと、善意だけでは保護団体は回っていきません。1匹にそれほどお金をかけることもできません。残念ですが、噛み犬をちゃんとトレーニングするほどの余裕のある保護団体はそれほどないと思います。私の関わっている団体も、トレーニングはしますし、トレーナーの中には保護団体には特別価格でサービス提供もしています。でも基本、フォスターシステムなので、保護団体が積極的にトレーニングはしてくれません。一時預かりのフォスターでも、噛み犬でもいいよなんて言う人は私以外に会ったことがありません。トレーニングしたとしても、プロでも簡単に治らないのが噛み犬です。

アメリカ全ての保護団体を知っているわけでもないので、わかりませんが、少なくても今まで私が関わってきた保護団体はほぼほぼ同じです。

それは、責任を重く見るアメリカ社会ならでは。噛み犬を世の中に出したら、それは保護団体の問題。どんなに後で、里親のしつけが悪かったとしても、もともとそのワンちゃんを世の中に出した保護団体の責任が問われます。契約書にアダプトしたあとは個人の責任と明記していても、アメリカなので、必ずと言っていいほど保護団体の責任になるでしょう。

私がブラ君を引き取った時、うちに来てから数日で噛み犬であることがわかりました。その時、友達には保護団体に抗議しろと言われました。アメリカならではです。でもこれが当たり前。噛み犬を世の中に出したら保護団体の責任なのです。

そして今私が預かっているW君のこと。

彼は確実に噛みます。これまで何故それでも殺処分にならなかったのか。それは、前のフォスターママさんが、W君を一人部屋にずっと入れていて、他のワンちゃんとも一切関わらないし、人間ともあまり関わらないようにしていたから。散歩は連れて行っていたと言っていましたが、実際はそんなことなかったと私は感じています。広い庭がある家なので、庭に話していたんじゃないかな。それでも彼女は、I love him so much と私に言っていました。一度も噛むことがなかったのが彼女の自慢のような感じ。責任、責任と何度も言っていました。

W君、2回アダプトされて、2回戻されています。その間3年。噛まさせないようにという理由で、何のトレーニングもしてこなかった前のフォスターさん。

一方でブラ君で散々噛み犬について勉強してきた私。W君がうちに来た早々からトレーニングで、案の定もう数え切れないくらい噛まれました。

保護団体には、全てではありませんが、噛まれたことは報告しましたが、がっつりではなくて、英語でいうところのNipping。日本語がうまく見つかりませんが、噛む手前。噛みつき状態かな。で報告しました。

噛んだら、Wくんを取り上げられるような気がしてしょうがないのです。

だからと言って、今ここで私がアダプトしてしまうと問題は解決。保護団体はハッピーです。それも違うんじゃないかと、ちょっと抵抗している自分がいます。

W君は、ここ1週間はだいぶ落ち着いてきて、私には完全にとは行きませんが、心を許してくれています。

おそらく私が決心していないのが伝わるのかなあと思っていて、犬は人間の心を読んでいる気がします。

今日もブラ君のことを考えています。こんなに可愛いのに噛み犬。私があの時引き取っていなかったらブラ君の人生はどうなっていたんだろう。人間はなんて酷いんだろうと思わずにはいられません。

また呼んだ?って言われそう。





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